日本人は金融リテラシーが低いと感じる。長年、金融の世界にいた身としては、余りにも稚拙な投資行動や詐欺事件の被害を見かける。
このような被害を防ぐにはどうすればいいのか?どうして金融リテラシーが低いのか?どのように金融リテラシー高めていけるのかについて考察してみた。
不可解な投資行動の数々
詐欺に近い話から、非合理的な投資行動まで、よく聞く話を列挙すると以下の通り。
- 還付金がもらえると聞いてATMで振り込んだ (詐欺・知識不足)
- 絶対儲かるという投資話に、退職金全部を投資した (詐欺・非合理的な投資行動)
- 暗号通貨は、取引の安全性が確保されているから、損をしないと聞いて投資した (誤解・知識不足)
- 直近下げた銘柄に投資する (非合理的な投資判断)
- 運用にもなり、保険にもなり、病気がなければお祝い金まで出る生命保険 (非合理的な投資行動)
- 2階建て投信、タコ配の投信の人気 (非合理的な投資行動)
- ロボアドバイザーによるETF運用に2-3%の運用報酬の支払 (知識不足)
判断力の衰えた者に、詐欺的な行為を行うのは言語道断ではあるが、それ以外の人は、正常な判断力を持っていれば大失敗はしないはずである。
金融リテラシーを議論する前に、基本的な心構えを示しておきたい
金融・投資における基本的な考え方
金融商品を考えるとき、以下の2点を踏まえておく必要がある
- 大きなリターンには、相応のリスク・コストを伴う(=美味い話は簡単には転がっていない)
- 理解できない取引には参加しない
大きなリターンには、相応のリスク・コストを伴う
少し考えれば、「あなただけにこっそり教える『絶対儲かる』投資話」などありえないことが分かるであろう。もし本当に絶対儲かる話なのであれば、他人に教えずに自分で投資をするであろう。
基本的には、マーケットは効率的であり、努力や負担なしに、ノーリスクの巨大な収益機会が転がっていることはないと考えておいた方が良いだろう。
理解できない取引には参加しない
2点目の「理解できない取引には参加しない」という点は、履行するのが難しい。誰しも、全てを完璧に理解するのは困難であり、石橋を叩きすぎて投資機会やチャレンジ精神を奪ってしまうは問題である。なので、ここでは、少なくとも、以下の4点について納得する必要があるだろう
- リターンの源泉は何なのか?
- リターンの想定の根拠に納得がいくか?
- どのようなリスクが想定されるのか?
- 仲介者に支払われる報酬はどの程度か?
これらをきちんと自問自答すれば、「複雑な生命保険商品」や、「元本を切り崩して配当する投信」、「不要な為替リスクを取ってリターンをかさ上げしている投信」などについても、投資判断が変わってくるのではないだろうか。
何故、金融リテラシーが低いのか?
金融リテラシーの低さの要因について考えてみたが、日本人の気質なのか、以下のような要因が相互に連関していると思う。
1. 自分で考え、自分で責任を持つという発想の欠如
全般的に「皆がしているから大丈夫」、「まあ、悪いようにはされないだろう」という発想を持っている人が多いように感じる。
自分で判断し、自分で責任を持つという、金融に限らず、基本的な生き方を放棄している人が極めて多く存在しているようだ。
2. 極度にリスク回避的な気質
逆説的に感じられるが、極度にリスクを恐れる気質が、銀行預金への偏重と、それに伴う投資経験・金融知識の欠如に繋がっていると考えられる。
また、リスクを回避したいがあまり自分で考えることを止め、「皆がしている」ことに安心を求め、「配当が大きい」「保険だけど運用でもある」といった表面的な謳い文句に魅かれるのだろう。
3. プロフェッショナルの不在
投資家の投資判断の放棄は、証券会社の人柄、人情、人間関係を過度に重視した営業スタイルをもたらし、商品性、情報提供、アドバイスを軽視する傾向が続いた。
また、運用の現場でも、運用担当者がサラリーマンの報酬体系であったため、運用成績でも、商品性でも差別化をすることは行われてこなかった
4. 緩いコンプライアンス意識
コンプライアンスが声高に唱えらるようになって久しいが、それでも、増資情報等のインサイダー取引が摘発される事例が多発している。 恐らく、コンプライアンス意識が今よりもかなり低いレベルにあった、つい最近(10年ほど前)までは、インサイダーに近い情報を使った証券営業がごく普通に行われていたのだと思われる。 そんな「オイシイ経験」をした人や、自慢話を聞いた投資家は「ここだけの話」に飛びつくのだろう。
金融教育の重要性
今後は、金融リテラシーを高めていく教育が重要になってくるであろう。単に下手な投資を防ぐというだけではなくて、金融の仕組みを知ることで、より効率的な市場が形成され、より企業活動が活発になっていくのだろうと考えている。
高校生ぐらいを対象に、以下の様な内容の授業を提供できればしていきたい。
- 金融の仕組み
- 銀行・証券会社の仕事
- 企業の資金調達・経営
- 税務、会計、社会保険等のお金に関する知識
- 起業の方法、等
お声がけ頂ければ、いつでも講演・授業しますよ!
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