主要各国の規制当局により発表された、ICOや暗号通貨に関する規制や指針を備忘録的にまとめてみました。
米国、シンガポール、香港は、利益分配や配当などの証券的性格があれば、有価証券とみなされ、適切な発行規制、開示規則に則ることが必要です。というスタンス。中国はとりあえず、ICOなり暗号通貨は違法なのですべて禁止のスタンス。
米国 SECによるThe DAOに関する報告書 2017年7月25日
The DAOは米国証券取引法上の有価証券であり、販売・募集には登録が必要。証券取引所の登録も必要。有価証券とみなされるか否かは、使用している技術にかかわらず、その経済的な実態によって判断される。法人形式か非中央集権組織であるか、ドル決済か仮想通貨決済か、証書形式か分散型台帳かも問わない。
判断の根拠は、以下の通り
- 分散型台帳技術を用いた仮想組織や資金調達主体に適用される
- ETHを用いても、”money”による投資とみなされる
- 投資家は合理的な利益を期待している
- 投資家の個別の投資判断の権利は限定的で、運営者(Slock.it)の影響力が大きい
シンガポール MASによるICOについての明確化 2017年8月1日
シンガポール金融管理局(MAS)によるICOや暗号通貨についてのコメント
- 証券とみなされるICOはMASの管理下になる
- ICOはマネロンに使われやすいし、短期間に多額のお金が集まる。マネロンの観点から、今後どのように規制するか検討中。
- MASは基本的に仮想通貨を規制しないが、発行者の資産の所有権や利益を表象するような場合は、株式や集団的投資スキームの募集とみなされ、証券取引法(SFA)の対象。負債の場合も同様。
- 証券とみなされるデジタルトークンは、発行前に申請・登録が必要となり、発行体や媒介者は許認可や、マネロンの手続きが必要。
- 発行者は、第三者機関からの法的なアドバイスを受け、必要に応じてMASとも相談することを求める
詳細はMASのリリースを参照。
中国 PBoCによるICOの停止の通知 2017年9月4日
中国人民銀行(PBoC)による、ICOの停止通知。非常に厳しい内容。
国内で多くのICOが行われており、投機や違法な金融取引により、経済・金融秩序を攪乱しているとし、ICOのみならず仮想通貨全般の取引、ビジネスを禁止
- ICOは違法な資金調達であり、犯罪、金融詐欺、ねずみ講等に用いられている。当局は監視を強化し、法の抜け穴をふさぐ。仮想通貨は法的な地位を持たず、流通や使用してはならない
- 企業や個人によるトークン発行を通じた違法な資金調達は直ちに禁止。集めた資金は返済しなければならない
- 仮想通貨の取引所などの取引プラットフォームの提供も禁止。トークンの価格情報提供や仲介も禁止
- 金融機関やノンバンクはトークン発行や流通に関連する事業を禁止。、違法取引があれば当局に報告すべし
- 国民はトークン発行や流通にまつわるリスクを避け、違法取引があれば当局に報告すべし
- 金融業界団体は、トークン発行や仮想通貨関連の違法金融取引を防止する規則を制定し、投資家を啓蒙すべし
詳細はPBoCのリリースを参照
香港 SFCによるICOに関する声明 2017年9月5日
香港証券先物事務監察委員会(SFC)によるICOの法的位置づけの声明
- 有価証券とみなされるものは、証券取引法に基づいて取り扱われる
- 企業の株式、所有権を表象するICOは株式とみなされる。負債を表象する場合は、債券となる。プロジェクトの収益の配分を期待するものは、集団投資スキームととみなされる
- 証券とみなされた場合、その取扱いや広告は規制行為となり、SFCのライセンスが必要になる
詳細はSFCのリリースを参照。
韓国 FSCによるICOや仮想通貨の信用取引の禁止 2017年9月29日
韓国金融委員会(FSC)は詐欺のリスクがあるとして、あらゆる形のICOを禁止すると発表された模様
報道によると、禁止されたのは、ICOと信用取引
- あらゆる形のICOの完全に禁止
- デジタル通貨の信用取引の禁止
FSCの英語版の記事では反映されていないので当局の原文は現時点では不詳。
最後に
今後、主要各国からICOに関する明確化のガイドラインが出てくると予想されるので、適宜、アップデートしていく予定。
ICOそのもの、暗号通貨そのものの規制は(中国以外の主要先進国では)行いにくいと思われるが、証券発行規制・投資家保護の観点からの規制と、マネロンの観点からの規制が出てくるものと考えられる。
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