ゴールドマン、IPO自動化努力が拡大-数千時間の人間作業が不要に

Bloombergに、「ゴールドマン、IPO自動化努力が拡大-数千時間の人間作業が不要に」という記事が出ていた。証券発行に携わってきた自分としても、非常に興味深い記事。

 

 

ゴールドマン・サックスのIPO自動化とは?

しかし、原文も含め記事をよく読んでみると、IPOプロセス全部ではなく、IPOの引受業務に関する社内プロセスの多くを自動化ということのようです。

 

ゴールドマン・サックス・グループの最高幹部らは数年前に、新規株式公開(IPO)関連業務のやり方をじっくりと見直した。一つの案件で必要になる作業を127の工程に分け、それぞれについて人間ではなくコンピューターで行えるかどうかを検証した。
  その結果、ほぼ半分がコンピューターで代替できることが分かった。

数え方にもよるでしょうが、作業工程の半分というのはインパクトありますね。

「ディール・リンク」というコンピューターインターフェースが、バンカーからバンカーへと数世代にわたり受け継がれてきた非公式のチェックリストに取って代わった。法律やコンプライアンスに関するレビューを設定して追跡するほか、定型書式にデータを記入し報告書を生成する。

おそらくは、

  • チェックリストの作成、管理
  • 社内報告の回覧
  • 社内プロセスの日程調整

の(半)自動化という部分が大半のようなので、作業量、体感ベースでは半分ではなく、せいぜいが数%といったところではないでしょうか?

ただ、投資銀行の若手はこのような事務的な大量のbullshit workも睡眠時間を削って行っているので、とても有難いことなのだろうと思われます。

 

証券発行業務の自動化は可能か?

もう少し議論を深めてみよう。そもそもの証券発行業務自体を、(半)自動化することはできないだろうか?

この業務は、外からは非常に専門性が高く、自動化が難しい領域のように見えるかもしれないが、定型的な作業の積み重ねと、プロセス管理と、儀式的なイベントが作業の大きな部分を占めている。このため、作業量の1/3~半分程度は自動化が可能だとみている。

この自動化比率は、債券>株(増資)>IPOの順で大きく軽減できるのではないかと思う。

 

ドキュメンテーション
  • 定型書類については、必要事項を有価証券報告書等のデータベースから自動的に拾い入力が可能
  • 議論に必要な、類似する先行案件を自動的に検索し、記載事例等の抽出作業を自動化
  • 目論見書から必要な開示資料も自動生成
  • デューデリの下作業の自動化
マーケティング活動
  • 目論見書や契約書等の投資家への配布、確認、調印の電子化、自動化
  • 投資家への情報アップデートの自動化
  • 投資家からの需要提出の自動化
  • ロードショー等のマーケティング活動のオンライン化
証券会社内での社内手続き
  • 引受審査書類作成の大部分の自動化
  • 論点の自動的な抽出、警告の表示
条件決定
  • 投資家へのデリバリー
  • 約定~受け渡しも自動化

 

ざっとこんなところは、ある程度機械化できるであろう。

特に機関投資家向けの債券発行などにおいては、発行登録されており、格付けもあれば、自己募集の形式で証券会社を仲介させずにオンラインで募集する時代が来るのではないかと思う。

 

そうなってくると、今後の引受業務のプロは、単なる情報を知っているということではなく、様々な案件において、どのような論点があり、どのようにクリアしていったかという属人的な知識が非常に重要な強みになっていくのであろう。

 

専門職の下作業の自動化について思う

専門職と言われる業務においても、よく見てみると業務の大半はBullshitな作業だったりする。これらを見つめなおして、非効率・不必要な業務を削減することや、上記のGSのように自動化することは非常に良い試みだと思う。

今後はこれらの作業はAIなどに任せ、それらの情報をもとに判断するようになっていくのであろう。

 

一方で、このような下積みを通じて、会得した勘、感覚、ノウハウ、知識なども失われてしまうのではという漠然とした危惧もある。

  • 大量の伝票や財務諸表をにらめっこしたので、粉飾のニオイに気づく
  • 大量の資料を集めまわったので、資料の有無、所在、信頼性などが感覚的に分かる
  • 大量の料理の下ごしらえをしたので、素材の良しあしが、感覚的にわかる

当初のAI・アルゴリズムを実装するときは、教える側の経験値をもとに設計すればよいが、その世代が引退し、経験値がなく勘もない世代が残されたとき、実装されたアルゴリズムの意味が分からない、改良できない「ロストテクノロジー」「ロストナレッジ」になったりしないだろうか・・・

 

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