最近、量子コンピューターや量子通信、量子暗号といったキーワードが目立つようになってきた。個人的にも、量子コンピューターの潜在性は興味があり、ある程度までは理解したいと思い、色々読んでみたのだが、その中で、おススメの本をピックアップしました。
量子論の概観を理解するための本
量子論がみるみるわかる本
佐藤 勝彦 (著, 監修, 監修)
文系、初学者にとっては非常にわかりやすくとっつきやすい本。ややこしい「量子論」をイラストや図表が多く用いて、直観的・概念的に理解しやすいように工夫してあります。
また、展開としても、19世紀末の相対性理論から出発して、20世紀に発見された様々な実験や観測の結果に基づき、どのように量子論が修正・発展していったのかを丁寧にたどっており、読んでいて飽きることもないです。
「量子論」を楽しむ本―ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!
佐藤 勝彦 (監修)
基本的に上記の「量子論がみるみるわかる本」と同内容ですが、文庫本サイズになっており、比較的テキスト中心の解説です。
ただ、上記本の分かりやすさも変らないので、電車で読みたいという場合は、こちらの方が適しているかもしれません。
[図解]相対性理論と量子論
佐藤 勝彦 (監修)
上記2冊と同様、佐藤勝彦先生監修の本。上記2冊の体型的に解説していくテイストとは異なり、どちらかというと相対性理論・量子論の面白いテーマを紹介する読み物といった印象。なので非常にとっつきやすく、「こんな面白い現象があるんだ」「量子論ってこんな世界なんだ」と感じるのには向いていますが、その背景を体系的に理解したいという場合は、上記2冊をお勧めします。
佐藤文隆先生の量子論 干渉実験・量子もつれ・解釈問題
佐藤 文隆 (著)
本書は、量子論の解説部分もあるものの、むしろ、20世紀の量子論の勃興の現場にいた著者が感じた時代の熱気、研究者としての考え方、哲学といった要素が大きい本。もちろん、量子論の解説部分もあるが、一定の知識を前提としているなど、初学者としてはやや展開を理解しにくいと思います。それなりに理解が進んだ人が、異なった切り口や佐藤先生の考えを吸収するといった場合に向いているかもしれません。
量子論の応用・各論を知りたい人向けの本
量子テレポーテーション―瞬間移動は可能なのか? (ブルーバックス)
古澤 明 (著)
量子通信や量子テレポーテーションという不思議な現象について、丁寧に解説している本。図解も多く、分かりやすいと思います。また、最近の研究成果も紹介しているため、興味深く読めます。ただ、本書を読んでいくには、多少の量子論の理解が必要になると思いますので、上述した本をどれか一冊読んでおくとよいと思います。
量子もつれとは何か?
古澤 明 (著)
上記「量子テレポーテーション」がやや基礎知識が必要だったとの反省から、同じ著者が、量子論の簡単な解説からスタートして、量子もつれ(量子エンタングルメント)の性質やその応用について分かりやすくまとめた本。量子テレポーテーションの導入としても有用だと思います。
量子コンピューターについて知りたい人向けの本
量子コンピュータ 超並列計算のからくり
竹内 繁樹 (著)
初学者向きの良書。普通のコンピューターの仕組みの解説から始まり、その上で量子コンピューターがどのように作動するのか、具体的にはどういう装置を使うのか、どのような課題があるのかといった点をかなり具体的に、でも分かりやすく解説しています。本書を読む前に、簡単な量子論の解説本を本で置くことをお勧めします。尚、出版当時は、現在実用化されている「量子アニーリング方式」は存在していなかったため、「量子ゲート方式」のみの説明になっています。
量子コンピュータが人工知能を加速する
西森 秀稔 (著), 大関 真之 (著)
本書は、「量子アニーリング方式」について簡単に理解するための本としては良いと思います。著者の西森氏は「量子アニーリング方式(量子焼きなまし方式)」の提唱者でもある。実用化された量子コンピューター「DWave」の作動原理、課題などを解説するとともに、今後の応用分野についても見解を述べている。ただ、量子コンピューターそのものや、人工知能についての解説は軽い扱いなので、上掲の「量子コンピューター」の補足として読むのが良いだろう。
量子コンピュータとは何か?
ジョージ・ジョンソン (著), George Johnson (著), 水谷 淳 (翻訳)
本書は、量子コンピューターの開発の歴史、作動原理などを、読み物風に解説した本。上掲の「量子コンピューター」には多少数学的な理解が求められるため、それだととっつきにくいという人向けには良い本だと思います。やや冗長な気もするが、量子コンピューターの概念を理解したいという方向き。
最後に
私自身は単に理科好きの文系なのですが、このような解説本の多くは専門的な研究者が多かったりします。その場合、あまりに複雑だったり専門的な解説だったりすると、なかなかとっつきにくい状況にえてしてなりがちです。ここにあげた本は、専門的というよりは概念的に理解するには適しているものだと思いますので、ぜひ手に取ってみてください。とても面白い世界が広がっています。
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